
森林
forestry business
長岡市の森林の現状と広葉樹林の課題
長岡市の森林面積は約4万haにおよび、その約4分の1が針葉樹林
(主にスギ)、残りの4分の3が広葉樹林で構成されています。
しかし、スギ林の多くは50年以上の樹齢となり、伐期を迎えているにもかかわらず、0~15年生の若いスギ林がほとんど存在しないのが現状です(再造林が進んでいない状態)。地元の森林組合は主にスギ林の間伐や主伐を行っており、広葉樹林は長年放置されています。
クマの生息環境と里山の変化
新潟県の広葉樹林は、多くの野生動物が生息する重要な生態系の一部です。特にツキノワグマの生息数が多い地域であり、豊かな広葉樹林が彼らの餌場となっています。
ツキノワグマは雑食性で、冬眠前に脂肪を蓄えるため、秋にドングリ(堅果)を主食とします。新潟県の高標高域にはブナ林が広がり、里山にはミズナラやコナラが多く見られます。しかし、ブナは約10年に1度しか豊作にならないため、不作の年にはミズナラやコナラのドングリが重要な食料源となります。
しかし、近年、里山のナラ類が急速に減少しています。特に、10年前から新潟県で「ナラ枯れ」という病気が広がり、ミズナラの70%、コナラの20~30%が枯死したといわれています。その結果、クマが山で十分な食料を確保できず、ブナの不作年には人里へと降り、柿や栗、クルミを求めて出没するケースが増えています。
クマと人が共存できる里山を取り戻す
クマと人が共存するためには、人里と奥山の間にある「里山」の健全な森林管理が不可欠です。ナラ類のように豊凶の差が少ないドングリを提供できる森が存在すれば、クマは人里へ降りる必要がなくなります。
しかし、ナラの木は「陽樹」と呼ばれ、十分な光がなければ成長しません。現在のように人の手が入らず、うっそうとした森林環境では、ナラ類の更新が進まず、ますますドングリが減少する悪循環が続いています。そこでNESTは、「クマと共存する森づくり」を目指し、適切な森林管理を行うことで、里山の生態系を再生していきます。
・広葉樹を木材として活用しつつ、材として利用できない部分はバイオマスエネルギーとして活用
・整備された里山を森林サービス産業(エコツーリズム、環境教育)の場として活用
・これらの収益をもとに持続可能な里山整備を継続し、人とクマが適切に住み分けられる環境を構築
100年後も豊かな里山を守るために
新潟県の里山は夏緑樹林帯に分類され、四季折々の豊かな自然環境を持ちます。
・春には、カタクリやショウジョウバカマが咲き誇る「スプリングエフェメラル」の美しい景観
・冬には、1m以上の積雪があり、ユキツバキやヒメユズリハなど、日本海性気候特有の植生が広がる
・山菜の宝庫として、こごみ、わらび、ぜんまい、ウド、行者ニンニク、ウルイ、フキノトウ、タラの芽など、
四季を通じて食の恵みも豊富
現在、NESTは長岡市越路地域の90haの里山管理を「公益社団法人こしじ水と緑の会」より委託され、
森林の持続可能な活用を推進しています。
・木材の材積量調査を実施し、Jクレジット登録によるカーボンオフセットを促進
・森の生態系調査を行い、OECM(生物多様性の保全区域)登録を目指す
・TNFD(自然関連財務情報開示)に関心のある企業との協働を推進
「100年後も豊かで美しい里山が長岡の街の守り人になる!」
このビジョンを実現するため、地域の皆様や企業の皆様と共に、持続可能な森づくりを進めていきます。